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福井ひかり法律事務所の弁護士によるコラムです。

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バッターボックスに立つ

2024年05月08日
先日福井大学国際地域学部で授業を持たせていただきました。
テーマは身近な人権問題です。
 
本当に多くのテーマがある中で悩みましたが、巻き込まれる可能性があるテーマということで
ネット上の書き込み問題」
「パワハラ・セクハラ問題」
といったものから取り上げました。
 
そこで重視したのは、
「ルールというのは『この場合はこの人を救済しないと』といった個別の判断を超えて、多くの場合やみんなに妥当するものでなければダメだ」
という法律論の基礎みたいな話に加え、
「みなさんだったらどう考えるか」
ということでした。
 
私が大学生のときに取っていた、日本政治外交史ゼミの北岡伸一先生は、専門分野の話だけでなく、時折
「いま外交上こういうことが問題になっているが、あなたが首相だとしたらどう判断するか」
といった質問をされました。
学生なので、首相の立場になって考えてみるというのはあまりにも突拍子もないことであり、普段は想像もしないのですが、そのような
「バッターボックスに立つ」
といったことこそが、思考力・判断力・説得力を培うのに最適だということをおっしゃっていました。
 
私も強くそう思います。
 
今回の授業での内容は、政治的な判断というよりも法律的な判断をしてみるというものですが、自分が裁判官としてこの問題の判断を迫られたらどうするかを考えてみることが、責任ある判断の最高の訓練だと思います。
裁判官は良く分からないからとか判断したくないからといって、判断から逃げることができません。
 
学生の皆さんも、その置かれる立場は様々でしょうが、将来社会人として判断を迫られるときは必ずあるわけで、そのための訓練を学生のうちからやっておくきっかけとなればよいなと思って授業をしました。
 
どれくらい響いたか分かりませんし、学生に伝える・意欲を持ってもらうということの難しさはこういう機会をもらうたびに痛感することですが、機会がある限り頑張って伝えていきたいと思っています。