本日は、2023年2月に国会に提出された「フリーランス保護法案」について（ざっくりと）お話しします。
１．保護の必要性
会社に雇われている場合、「労働者」として保護されます。
例えば、いきなり解雇したり、給料を勝手に下げたりすることはできません。
また、妊娠／出産した場合は、休業／復職することができます。
他方、フリーランスは、発注者の立場が強くなりやすく、いきなり依頼が打ち切られたり、勝手に報酬を下げられたり、妊娠／出産を機に依頼がなくなることも少なくありません。
また、実際の働き方は従業員と同じなのに、同じような保護を受けられていない場合もあります。
フリーランスは、コロナ禍を経た2021年には1500万人を超えたといわれており、トラブルも増えていました。
例えば、2019年、美容ライターとして活動し始めた20代前半の女性に対し、発注会社の代表者が
・継続的なセクハラ行為をし
・報酬の支払いを理由なく拒むという嫌がらせ（パワハラ）をした
として、代表者個人と法人に、報酬の他に慰謝料の支払いを認めた裁判例があります（東京地判令和4年5月25日労判1269号15頁）。
２．「労働者」としての保護
フリーランスを保護する方法として、まず、「労働者」と扱う方法があります。
例えば、劇団に入団し、裏方業務に従事しつつ公演に出演していた劇団員について、裁判所は、
・実態として、劇団の指示に従わざるを得ず、断る自由がなかった
として劇団員を「労働者」と扱い、裏方業務のみならず、公演や稽古時間を含め「賃金」の支払いを認めました（東京高判令和2年9月3日労判1236号35頁）。
３．「フリーランス」としての保護
⑴ 下請法／独占禁止法
フリーランスが「労働者」として保護されない場合でも、発注者は、
・一定規模（資本金）以上の場合は「下請法」
・下請法が適用されない場合は「独占禁止法」（「不公正な取引方法」のうちの「優越的地位の濫用」）
の規制を受けます。
これらの法律上問題となる発注者の行為は、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」（2021年3月26日）に具体的にまとめられています。
しかし、これらはあくまで不公正な「取引方法」に関する規制で、フリーランスが「働く環境」そのものの保護としては十分でない部分がありました。
⑵ フリーランス保護法案
フリーランス保護法案は、フリーランスの
� 崋莪�の適正化」と
�◆崕�業環境の整備」
を図ろうとしています。
ア 取引の適正化
まず、発注者は、委託内容や報酬額を明示しなければなりません。
報酬の支払時期は、納品日から60日以内とされています。
さらに、発注者は、フリーランスに責任がないのに、
・受領を拒否したり、
・報酬を減額したり、
・返品したり、
・相場より著しく低い報酬額を不当に定めたり
・正当な理由なく発注者が指定する物を購入させたり、
することが禁止されます。
また、発注者は、フリーランスに対し、不当に、
・協力金などの経済上の利益を提供させたり、
・依頼内容を変更したり、やり直させたり
することもできません。
イ 就業環境の整備
次に、発注者は、広告などでフリーランスを募集する際、虚偽の表示をしてはならず、正確で最新の内容を表示することが求められます。
継続的な業務の発注の場合、発注者は、
・中途解除する場合、30日前までに予告することが求められ、
・フリーランスが育児介護等と業務を両立できるよう配慮しなければなりません。
また、発注者は、ハラスメント行為の相談対応に必要な体制を整備する必要があります。
４．トラブルの予防／相談窓口
フリーランス保護法の成立／施行にかかわらず、トラブルを予防するためには「契約書を作成すること」が有効です。
契約書のひな形は、前述のガイドラインに掲載されています。
芸術分野については、「フリーランスアーティスト・スタッフのための契約ガイドブック」も参考になります。
残念ながらトラブルが発生してしまった場合、「フリーランス・トラブル110番」（https://freelance110.jp/）から、弁護士に（無料で）相談することができます。
フリーランスの皆さんが極力トラブルにあわず、トラブルにあっても早く本業に専念できることを願っています。
１．保護の必要性
会社に雇われている場合、「労働者」として保護されます。
例えば、いきなり解雇したり、給料を勝手に下げたりすることはできません。
また、妊娠／出産した場合は、休業／復職することができます。
他方、フリーランスは、発注者の立場が強くなりやすく、いきなり依頼が打ち切られたり、勝手に報酬を下げられたり、妊娠／出産を機に依頼がなくなることも少なくありません。
また、実際の働き方は従業員と同じなのに、同じような保護を受けられていない場合もあります。
フリーランスは、コロナ禍を経た2021年には1500万人を超えたといわれており、トラブルも増えていました。
例えば、2019年、美容ライターとして活動し始めた20代前半の女性に対し、発注会社の代表者が
・継続的なセクハラ行為をし
・報酬の支払いを理由なく拒むという嫌がらせ（パワハラ）をした
として、代表者個人と法人に、報酬の他に慰謝料の支払いを認めた裁判例があります（東京地判令和4年5月25日労判1269号15頁）。
２．「労働者」としての保護
フリーランスを保護する方法として、まず、「労働者」と扱う方法があります。
例えば、劇団に入団し、裏方業務に従事しつつ公演に出演していた劇団員について、裁判所は、
・実態として、劇団の指示に従わざるを得ず、断る自由がなかった
として劇団員を「労働者」と扱い、裏方業務のみならず、公演や稽古時間を含め「賃金」の支払いを認めました（東京高判令和2年9月3日労判1236号35頁）。
３．「フリーランス」としての保護
⑴ 下請法／独占禁止法
フリーランスが「労働者」として保護されない場合でも、発注者は、
・一定規模（資本金）以上の場合は「下請法」
・下請法が適用されない場合は「独占禁止法」（「不公正な取引方法」のうちの「優越的地位の濫用」）
の規制を受けます。
これらの法律上問題となる発注者の行為は、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」（2021年3月26日）に具体的にまとめられています。
しかし、これらはあくまで不公正な「取引方法」に関する規制で、フリーランスが「働く環境」そのものの保護としては十分でない部分がありました。
⑵ フリーランス保護法案
フリーランス保護法案は、フリーランスの
� 崋莪�の適正化」と
�◆崕�業環境の整備」
を図ろうとしています。
ア 取引の適正化
まず、発注者は、委託内容や報酬額を明示しなければなりません。
報酬の支払時期は、納品日から60日以内とされています。
さらに、発注者は、フリーランスに責任がないのに、
・受領を拒否したり、
・報酬を減額したり、
・返品したり、
・相場より著しく低い報酬額を不当に定めたり
・正当な理由なく発注者が指定する物を購入させたり、
することが禁止されます。
また、発注者は、フリーランスに対し、不当に、
・協力金などの経済上の利益を提供させたり、
・依頼内容を変更したり、やり直させたり
することもできません。
イ 就業環境の整備
次に、発注者は、広告などでフリーランスを募集する際、虚偽の表示をしてはならず、正確で最新の内容を表示することが求められます。
継続的な業務の発注の場合、発注者は、
・中途解除する場合、30日前までに予告することが求められ、
・フリーランスが育児介護等と業務を両立できるよう配慮しなければなりません。
また、発注者は、ハラスメント行為の相談対応に必要な体制を整備する必要があります。
４．トラブルの予防／相談窓口
フリーランス保護法の成立／施行にかかわらず、トラブルを予防するためには「契約書を作成すること」が有効です。
契約書のひな形は、前述のガイドラインに掲載されています。
芸術分野については、「フリーランスアーティスト・スタッフのための契約ガイドブック」も参考になります。
残念ながらトラブルが発生してしまった場合、「フリーランス・トラブル110番」（https://freelance110.jp/）から、弁護士に（無料で）相談することができます。
フリーランスの皆さんが極力トラブルにあわず、トラブルにあっても早く本業に専念できることを願っています。