１．残業時間の上限規制
２０２２年１１月８日の日経新聞に、「医師の残業規制、あと１年」という見出しの記事が掲載されていました。
本文の出だしは、「２０２４年４月から医師の残業上限を年９６０時間とする規制が始まる」です。
背景として、働き方改革の下、残業時間に上限が設けられ、大企業では２０１９年から、中小企業では２０２０年から適用が始まっていますが、医療業界などでは２０２４年まで適用が猶予されているという事情があります。
本コラムでは、この「残業時間の上限規制」について「ざっくり」ご説明します。
複雑な法規制の大枠を掴むことを優先するため、一部に厳密でない部分があることをご容赦下さい。
２．長時間労働抑制の流れ
現在の労働行政上、
�。隠娃飴�間／月
��直近２〜６か月平均で８０時間／月
の残業をした場合、過労死のリスクがあると考えられています。
これを踏まえ、労働基準監督署は、
・２０１５年、１００時間／月の残業が行われている会社への指導を徹底するようになり、
・２０１６年、その範囲が８０時間／月の残業まで拡大されました。
そして、２０１８年、働き方改革の下、一定の長時間労働をさせた雇用主への罰則（刑事罰）が設けられました。
３．残業時間の「上限」
�仝饗Г箸靴董∋超箸鬚気擦襪海箸�できるのは、
ａ ４５時間／月 かつ
ｂ ３６０時間／年
の範囲です（労基法３６条３項、４項）。
�△燭世掘�一定の手続きを経ることで、例外的に、
・ ７２０時間／年の範囲で
・ 年６回まで
４５時間／月を超えて残業させることができます（労基法３６条５項）。
��もっとも、「残業時間と休日労働時間の合計」（※１）が
ａ １００時間／月（労基法３６条６項２号）
ｂ ２〜６か月平均のいずれかが８０時間／月（労基法３６条６項３号）
を超えた場合、６か月以下の懲役又は３０万円以下の罰金に問われる可能性があります（労基法１１９条１号）。
※１ 単なる「残業時間」ではないことに注意が必要です。
なお、はじめてこの規制内容を見たときの筆者の感想は、人事部の方が理解して、自社で管理することは難しいだろうな、というものでした。
人事部の方としては、「ざっくり」、
・６０時間／月の「残業」が継続して発生している場合、まあまあ危ない
・８０時間／月の「残業＋休日労働」が複数回発生した場合、それなりに危ない
・１００時間／月の「残業＋休日労働」が瞬間的に発生した場合、とても危ない
という感覚をもって、社会保険労務士や弁護士にご相談いただくのがよいと思います。
４．医療業界に対する適用猶予
もっとも、医師（例えば勤務医）（※２）（※３）に対しては、２０２４年３月３１まで上記�´↓�の規制の適用が猶予されています（労基法１４１条４項）。
※２ 厳密には「医師」も細分化されています。
※３ 医師以外にも３つの業界で例外があります。
２０２４年４月１日からは、
�仝饗Г箸靴董◆峪超隼�間」は４５時間／月かつ３６０時間／年の範囲ですが、
�⇔祿暗�に、「残業時間と休日労働の合計」を９６０時間／年の範囲まで拡張でき（労基法１４１条１項、３項、労基則６９条の４）（※３）、
���△飽稟燭靴疹豺隋■兇�月以下の懲役又は３０万円以下の罰金に問われる可能性があります（労基法１４１条５項）。
※３ 例外の例外として、１８６０時間／年まで拡張される場合があります（医療法第１２８条の規定により読み替えて適用する労基法第１４１条第２項の厚生労働省令で定める時間等を定める省令）。
５ おわりに
残業時間の上限規制について、おおまかにご理解いただけたでしょうか？
（うまくお伝えできたか、正直あまり自信がありません。）
なお、個人事業主である筆者には、残業時間の上限規制はそもそも適用されませんが、弁護士として年数を重ねるにつれ、自然とワークライフバランスを保つようになりました。
皆さまはどれくらい残業をしていますか？
雇用主の方は、残業をさせ過ぎていませんか？
それでは、良いお年を。
２０２２年１１月８日の日経新聞に、「医師の残業規制、あと１年」という見出しの記事が掲載されていました。
本文の出だしは、「２０２４年４月から医師の残業上限を年９６０時間とする規制が始まる」です。
背景として、働き方改革の下、残業時間に上限が設けられ、大企業では２０１９年から、中小企業では２０２０年から適用が始まっていますが、医療業界などでは２０２４年まで適用が猶予されているという事情があります。
本コラムでは、この「残業時間の上限規制」について「ざっくり」ご説明します。
複雑な法規制の大枠を掴むことを優先するため、一部に厳密でない部分があることをご容赦下さい。
２．長時間労働抑制の流れ
現在の労働行政上、
�。隠娃飴�間／月
��直近２〜６か月平均で８０時間／月
の残業をした場合、過労死のリスクがあると考えられています。
これを踏まえ、労働基準監督署は、
・２０１５年、１００時間／月の残業が行われている会社への指導を徹底するようになり、
・２０１６年、その範囲が８０時間／月の残業まで拡大されました。
そして、２０１８年、働き方改革の下、一定の長時間労働をさせた雇用主への罰則（刑事罰）が設けられました。
３．残業時間の「上限」
�仝饗Г箸靴董∋超箸鬚気擦襪海箸�できるのは、
ａ ４５時間／月 かつ
ｂ ３６０時間／年
の範囲です（労基法３６条３項、４項）。
�△燭世掘�一定の手続きを経ることで、例外的に、
・ ７２０時間／年の範囲で
・ 年６回まで
４５時間／月を超えて残業させることができます（労基法３６条５項）。
��もっとも、「残業時間と休日労働時間の合計」（※１）が
ａ １００時間／月（労基法３６条６項２号）
ｂ ２〜６か月平均のいずれかが８０時間／月（労基法３６条６項３号）
を超えた場合、６か月以下の懲役又は３０万円以下の罰金に問われる可能性があります（労基法１１９条１号）。
※１ 単なる「残業時間」ではないことに注意が必要です。
| 原則 | 例外 | |||
| 上限 | 残業時間のみ | 残業時間のみ | 残業時間 ＋ 休日労働時間 | |
| 月 | ４５時間 | ←年６回超えてＯＫ | １００時間 | |
| ２〜６か月平均がすべて８０時間 | ||||
| 年 | ３６０時間 | ７２０時間 | − | |
| 罰則 | − | − | ６か月以下の懲役 or ３０万円以下の罰金 | |
| 根拠 | 労基法３６条４項 | 労基法３６条５項 | 労基法３６条６項２号、３号、１１９条１項１号 | |
なお、はじめてこの規制内容を見たときの筆者の感想は、人事部の方が理解して、自社で管理することは難しいだろうな、というものでした。
人事部の方としては、「ざっくり」、
・６０時間／月の「残業」が継続して発生している場合、まあまあ危ない
・８０時間／月の「残業＋休日労働」が複数回発生した場合、それなりに危ない
・１００時間／月の「残業＋休日労働」が瞬間的に発生した場合、とても危ない
という感覚をもって、社会保険労務士や弁護士にご相談いただくのがよいと思います。
４．医療業界に対する適用猶予
もっとも、医師（例えば勤務医）（※２）（※３）に対しては、２０２４年３月３１まで上記�´↓�の規制の適用が猶予されています（労基法１４１条４項）。
※２ 厳密には「医師」も細分化されています。
※３ 医師以外にも３つの業界で例外があります。
２０２４年４月１日からは、
�仝饗Г箸靴董◆峪超隼�間」は４５時間／月かつ３６０時間／年の範囲ですが、
�⇔祿暗�に、「残業時間と休日労働の合計」を９６０時間／年の範囲まで拡張でき（労基法１４１条１項、３項、労基則６９条の４）（※３）、
���△飽稟燭靴疹豺隋■兇�月以下の懲役又は３０万円以下の罰金に問われる可能性があります（労基法１４１条５項）。
※３ 例外の例外として、１８６０時間／年まで拡張される場合があります（医療法第１２８条の規定により読み替えて適用する労基法第１４１条第２項の厚生労働省令で定める時間等を定める省令）。
５ おわりに
残業時間の上限規制について、おおまかにご理解いただけたでしょうか？
（うまくお伝えできたか、正直あまり自信がありません。）
なお、個人事業主である筆者には、残業時間の上限規制はそもそも適用されませんが、弁護士として年数を重ねるにつれ、自然とワークライフバランスを保つようになりました。
皆さまはどれくらい残業をしていますか？
雇用主の方は、残業をさせ過ぎていませんか？
それでは、良いお年を。