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福井ひかり法律事務所の弁護士によるコラムです。

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ウクライナ戦争を巡って

2022年06月24日
周知の通り、2月24日にロシアのウクライナ侵攻が始まりました。本当に本当に残念なことです。
主権国家であるウクライナの主権侵害であると同時に深刻な人権侵害であり、言うまでもなく、明らかに国際法に反しています。
しかし、ロシアによる赤裸々かつ違法な軍事力の行使を国際社会は止められません。日本国内で暴力をふるう人がいれば、警察が逮捕し、裁判所がさばき、秩序と正義が回復されますが、ウクライナ戦争については国際法に反していることが明白でありながら、そういう事態を止められないことに、国際社会における法律の力の限界を痛感するところです。まさに、力なき正義は無力なのです。
 
それを突き付けられると、国際社会ってそんなものだよね、とついシニカルにもなりたくなります。
 
しかし、第二次世界大戦後の国際連合の体制も、さらに第一次世界大戦後の国際連盟とヴェルサイユ体制・ワシントン体制も、(後者は最終的に崩壊してしまったものの)その悲惨な戦争の経験から、二度と戦禍を起こさないようにと努力を傾けられた結果作られたものでした。
さらに遡れば、現代の国際社会の基盤である主権国家を構成単位としたウェストファリア体制も、ドイツの人口の3分の1が亡くなったとも言われる三十年戦争の悲惨な経験を踏まえて作られたものでした。それは曲がりなりにも、ヨーロッパそして後には世界の中小国家も含めた多くの国々の人々の自由を相当程度保証してきました。
そうすると、良い社会を作るという努力を諦めてはならないと思わされます。
 
それにしても、ロシアが戦争を始めたのは、ウクライナを真の主権国家として認めないというプーチンの発想から来るところが大です。そう考えると、ロシアの行為は、ウェストファリア以降350年以上に渡って築かれたものに対する挑戦でもあるのです。そして、であるがゆえに、日本にとっても対岸の火事ではありません。
 
今回、ウクライナの方々を福井県に迎える仕事に関わらせていただきましたが、目の前の方を救うと共に、どういう社会にしていくべきかも同時に考えていきたいと強く思います。