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福井ひかり法律事務所の弁護士によるコラムです。

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LGBTと法

2022年02月24日
去年、福井のある団体の主催でzoom講演会をさせていただきました。
全体テーマは「性的マイノリティ(LGBT等)とは?」というもので、まず「医学の視点から」という題名で福井済生会病院の細川久美子先生が、そして「自分らしく生きるために『性の多様性』を理解する」という題名で仁愛大学の織田暁子先生がそれぞれ話され、最後に「法律と政治の視点から」という題名で私が話をさせていただきました。
 
法律や政治の分野で最もホットなLGBT関連のテーマは、同性婚を認めるかどうかということではないでしょうか。
この点、去年の3月に札幌地裁が、同性間の婚姻を認める規定を設けていない民法及び戸籍法の婚姻に関する諸規定は、憲法14条1項(平等権)に違反するとした判決を出しました。つまり、同性婚を認めるべしというわけです。
また、外国に目を転じると、例えばアメリカでは、2015年にOBERGEFELL v. HODGESという連邦最高裁の判決があり、裁判官の数5:4の僅差で、やはり同性婚を認めないのは違憲であるとしました。
そのアメリカ連邦最高裁の裁判官の意見が賛否両論とも非常に面白いので、ご紹介します。
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多数派意見のポイント
●人が愛するものと利害を超えて共同生活をすることは、人生にとって必要不可欠とも言うべき素晴らしい関係である。
●そしてその共同生活の形態が同性であろうと異性であろうと、その思い、経験の価値は変わらない。
●異性間の婚姻でも、子どもを産み育てることだけが目的ではないから、その点においても異性間の関係も同性間の関係にも差はない。
●そして、そのような関係を形成することを婚姻というのだから、婚姻は基本的人権であり、その婚姻は異性間のものも同性間のものも同等である。
反対派意見のポイント(最高裁長官John Robertsの主張を中心に)
●憲法は結婚について詳細を明記はしていない。
●人類文明の何千年の歴史で見て、結婚の唯一の形は男女のペアである。
●その男女での結婚という制度は政治的な動きや宗教などの人間社会の動きから人工的な意図で生まれたものでなく、またゲイやレズを排除するための男女の結婚制度としてできたものでもなく、生命の必要性から自然発生的に生まれてきたもの、だから男女の結婚が尊重されるべきである。
●人間において、共同体の最初の形態は男女の夫婦である、次に両親と子どもになり、それが家族という単位になる、複数家族が連帯して大きな共同体になっていく、それが人類共通で自然に起きたことであるから、そのスタートの男女の夫婦の形は重要である。
●注目すべきは、最高裁多数派の論理が重婚の基本的権利を求める主張に当てはまることだ。重婚は複数の文化で、歴史的な根拠があり、同性婚を認めるほうが、重婚を認めるよりも大きな飛躍のはずである。結婚したいという2人の男性、または2人の女性の絆に尊厳があるとするなら、なぜ3人の絆は尊厳が劣るのか。子供たちが汚名に苦しんでいるとの理由で、同性カップルも結婚する憲法上の権利を有するとするなら、なぜ同じ論理が子供を育てる3人以上の家庭に当てはまらないのか。
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どちらの考え方もなるほどと思うところがありますので、今ここで1つの意見が正しいと主張することはしませんが、自分と意見が異なる人の根拠は何で、もし自分の主張の根拠を貫くとどういう結論になるのかを考えてみることの重要性を感じることのできる深いテーマであるように思います。