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福井ひかり法律事務所の弁護士によるコラムです。

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最高裁判所の重み

先日衆議院選挙がありました。その際に、最高裁判所裁判官国民審査というものがありましたが、過去の例にもれず、全員が罷免の対象となりませんでした。
しかし、そもそも、日本で最高裁の裁判官を全員知っているという方はどれくらいいるでしょうか。残念ながら、ほとんどいないのではないかと思います。お恥ずかしながら、法曹界に長くいる私も全員は分かりませんし、まして法曹界と無縁の方々は、最高裁の長官の名前も分からないという方が多いのではないかと思います。
 
しかし、やはり国が違えば色々違うもので、アメリカでは最高裁(連邦最高裁)の裁判官は非常に有名です。最高裁の長官は言うまでもなく、そうでない裁判官についても、どんな経歴か、過去にどんな判決に携わってきたか、それについてどんな意見を出してきたか等について、(法曹界の人やロースクールの人たちに限らず)かなりのアメリカ国民が詳しいのです。
 
この差はどうして生じたのかについては、色々な説があると思いますが、少なくとも国における最高裁の影響力が格段に違うことは間違いありません。
そもそもアメリカの最高裁は、日本の最高裁が15人で構成されるのと異なり、たった9人ですし、日本の最高裁に70歳の定年制があるのと異なり、終身制です。それだけでも、1人の裁判官が社会に与える影響力は大きく異なります。
また、最近また審査される人口中絶の問題など、アメリカ社会を二分するテーマについて、最終決定を下すのが最高裁という場面が少なくありません。それはやはり、アメリカが理念国家であり、建国の精神を記した憲法が極めて重みを持っているということがあるように思います。
 
日本の最高裁は(政治的に論争のあるテーマでは)あまり踏み込んだ判断をしない傾向にあると言われていますが、そういった傾向が変わって、もう少し最高裁裁判官の名前がみんなの話題に出てくるようになってくれればと思うこの頃です。