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福井ひかり法律事務所の弁護士によるコラムです。

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法律に恋はあるか?

2021年10月31日
みなさん、こんにちは。弁護士の三好大介です。
 
数十年前のことになりますが、私は大学で法学部に通い、弁護士になるための勉強をしていました。そのときに習った話をご紹介します。
 
法律に愛はあるが、恋はないというお話です。
現在、日本には約2,000本以上の法律(ここでいう法律には、政令や省令は含みません。)があるといわれています。それらたくさんの法律の中に、「愛」という文字は出てくるけど、「恋」という文字は一つも出てこなかったのです。
 
確かに、「愛」という漢字は、日本国憲法前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」と書かれているように、しばしば法律に登場します。ところが、「恋」という文字は、明治維新以来、一度も法律に出てきていなかったのです。
そうしたところ、私が法学部に入学する少し前に「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(平成12年法律第81号)が公布され、その中の第2条1項で「つきまとい等」の定義として、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で」という一文が入ったことにより、日本の法律で初めて「恋」という文字が登場するにいたりました。
 
さて、その頃から「恋」という文字が登場する法律は増えたのでしょうか。
日本政府公式の法令検索システム「e-Gov法令検索」で検索したところ、上で述べたストーカー規制法のほかに、消費者契約法の第4条3項4号に、消費者が消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができる場合として、「当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、当該消費者契約の締結について勧誘を行う者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、当該勧誘を行う者も当該消費者に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、当該消費者契約を締結しなければ当該勧誘を行う者との関係が破綻することになる旨を告げること。」という一文が定められておりました。
消費者契約法は、消費者の利益を守るため、消費者が契約を取り消すことができる場合を定めた法律です。恋愛感情に乗じて不当な契約を結ばされた場合に限らず、事業者が重要事項について消費者に事実と異なることを告げた場合などに、契約を取り消すことができるという、消費者にとっては大変頼りになる法律です。
 
法律の本体だけなく、附則(法律の施行日など細かい内容を定めている部分)や、別表まで探してみますと、公職選挙法の各選挙区の区割りを定めた別表第一に、富山1区の選挙区として、富山市の「水橋恋塚」という地名が書かれていました。
 
また、「国家公務員の寒冷地手当に関する法律」という、寒い地域で働く国家公務員に、冬の暖房費などにあてるための寒冷地手当を支給するための法律で、寒冷地手当の支給地域を定めた別表に「嬬恋村」という地名が書かれていました。
実は私も旅行で行ったことがあるのですが、群馬県の北西部に位置する嬬恋村は、避暑地としても名前が知られており、高原地域で、夏はとても涼しく、過ごしやすいところです。しかし、真冬は気温が−10℃を下回ることもある、寒さの厳しい地域でもあります。北海道などと並んで、寒冷地手当が支給されるのも、気候的にはなるほどなあという感じがします。
以上